生前贈与

生前贈与のメリット

相続税が課税されると予測される場合には前もって財産を贈与して相続財産を減らしておくと相続税の負担を軽減することができます。

仮に、贈与税がかかってもそれを必要経費と考え、その税額が相続税額より低く済むなら生前に贈与しておく方が相続後、手もとに残る現金が多くなるため有利といえます。

さらに、税制改正により平成27年から相続税は増税されますが、父母や祖父母から贈与を受けた場合の贈与税は一部減税されます。

また、相続では財産を遺せるのは法定相続人に限られますが、贈与では法定相続人以外の人にも自分の意思で財産をあげることが可能です。

まずは、『現金』の生前贈与をご検討されてはいかがでしょうか。

なぜなら、現金は不動産などと違い、財産を評価する必要がなく金額が自由に設定できるからです。

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生前贈与とは

生前贈与とは生きているうちに財産を贈与することをいいます。

民法549条に「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」と規定されています。

つまり、贈与は「あげる人」と「もらう人」の両方の意思表示が必要になります。

贈与税には年110万円の非課税枠があります。

贈与を行うと財産をもらった人に贈与税が課税されます。

財産をもらった人が1月1日から12月31日までの1年間にもらったすべての財産額(複数の人から贈与を受けた場合はそれらすべての財産額)を合計し、贈与税の基礎控除額を控除して計算します。贈与税の基礎控除額(非課税枠)は年110万円です。したがって、年110万円以内の贈与なら贈与税は発生せず、贈与税の申告も不要になります。

贈与税の計算方法

{その年分の贈与財産の合計額-基礎控除額(110万円)} × 贈与税率 = 納付税額

例:年310万円の贈与の場合:(310万円 - 110万円) × 10% = 20万円

贈与税の速算表

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超~300万円以下 15% 10万円
300万円超~400万円以下 20% 25万円
400万円超~600万円以下 30% 65万円
600万円超~1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超 50% 225万円

贈与税率の改正

平成27年1月1日以後は20才以上の者が直系尊属(父母や祖父母)から贈与を受ける場合には、一部贈与税が軽減されます。
(但し、基礎控除後の課税価格が4,500万円超の場合は税率アップ)

20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合の税率(軽減税率)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超~400万円以下 15% 10万円
400万円超~600万円以下 20% 30万円
600万円超~1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超~1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超~3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超~4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

いくら生前贈与すればより効果的なのか

コツコツと贈与し続ける

生前贈与をする場合、基礎控除額(年110万円)以下の贈与なら贈与税はかかりません。年110万円といっても、これを10年続ければ合計1,100万円になります。さらに子2人に贈与すれば10年間で合計2,200万円もの財産を贈与税の負担なく移転させることが可能です。したがって、早い段階から時間をかけてコツコツと贈与し続けることが何より効果的といえます。

基礎控除を超える贈与の検討も

もっと早く贈与したい場合やより多くの財産を贈与したい場合には110万円にこだわる必要はありません。仮に贈与税を負担してもそれを必要経費と考え、その負担額が将来の相続税額より少なければ、相続後に手もとに残る現金が多くなるため有利だといえるからです。生前贈与を効果的に実行するためには、将来の相続で適用される税率と生前贈与の負担率を比較検討して贈与額を決定する必要があります。

相続税で適用される税率と贈与税の負担率との比較

例:遺産総額1億円、相続人1人の場合を考えてみましょう。
  平成27年1月1日以降に相続が発生する場合(改正後の場合)

1.相続税で適用される税率は?

基礎控除額は3,000万円 × 600万円 × 1人 = 3,600万円となり、
課税遺産額は1億円 - 3,600万円 = 6,400万円となります。
相続税額は下記の【相続税の速算表】で計算すると
6,400万円 × 30% - 700万円 = 1,220万円 となります。

相続税の速算表
法定相続分に応ずる各人の取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超~3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超~5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超~1億円以下 30% 700万円
1億円超~2億円以下 40% 1,700万円
2億円超~3億円以下 45% 2,700万円
3億円超~6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

相続税の税率はこのケースでは5千万円超の部分(課税遺産額が6,400万円なので1,400万円部分)に30%の相続税率が適用されます。

2.贈与税の負担率は?

例えば、年200万円を贈与した場合の贈与税額は9万円で負担率は4.5%です。(下記【贈与税額及び負担率表】参照)これを7年繰り返すと、1,400万円(200万円×7年)を63万円(9万円×7年)の負担で贈与できます。つまり、相続税では1,400万円部分に30%の税率が適用されるものが贈与税では4.5%の負担率で済むので贈与する方が有利といえます。

贈与税額及び負担率表
贈与を受ける金額 贈与税額 負担率
110万円 0円 0%
200万円 90,000円 4.5%
300万円 190,000円 6.3%
400万円 335,000円 8.4%
500万円 530,000円 10.6%
800万円 1,510,000円 18.9%
1,000万円 2,310,000円 23.1%

贈与してから3年以内に相続が発生した場合

生前贈与加算

相続税法の規定により相続開始前3年以内の贈与は相続税の課税対象になります。(このことを「生前贈与加算」といいます。)但し、生前贈与加算の対象となり、相続税が課税される場合は、支払った贈与税も控除されるため、損をすることにはなりません。しかし、生前贈与加算されるとせっかく計画的に行った贈与もその節税効果がなくなってしまいます。

孫への贈与を検討しましょう

そこでこの規定を避けるために孫への贈与を検討されてはいかがでしょうか。なぜなら、生前贈与加算が適用されるのは相続の時に財産を取得した人に限られるからです。つまり、相続で財産を取得しない孫はこの対象となりません。したがって、孫に贈与した場合は、仮に贈与後3年以内に相続が発生してもその節税効果がなくなることはありません。

また、孫に生前贈与すると子世代の相続を飛ばすことができるので大きな節税効果を得ることができます。

生前贈与された現金を生命保険で有効活用する

生前贈与された現金の使い道はさまざまですが、使う予定がない場合は終身保険や年金保険などの生命保険に加入する方法があります。現金をもらった子どもが生命保険契約の契約者となり、そのもらった現金で保険料を支払います。相続税納税資金の準備や子どもの資産形成など、目的に応じて生命保険に加入しておけば、相続税の納税で困らなかったり、もらった現金を無駄使いせず将来の備えに活用したりできます。

この場合、贈与する現金は必ず子の預金口座(通帳や印鑑を子が管理しているもの)に入金し、保険料は子の預金口座から引き落とす必要があります。

生前贈与を実行するときの注意点

生前贈与で現金を贈与することは簡単です。しかし、生前贈与では贈与した証拠を残すことが大切です。なぜなら、生前贈与が税務署から問題視されるとすれば、それは相続後の税務調査の時だからです。相続税の税務調査では過去に行われた贈与が本当に贈与されたものなのか、法律上の贈与の要件を満たしているかと税務署から問われることになります。

贈与の事実を証明するために生前贈与を実行する際は以下のことに注意しましょう。

1.贈与契約書は毎年作成すること

  • 贈与者と受贈者の両方がそれぞれ直筆で署名・捺印すること。

    (ワープロで作成した場合でも署名欄は自署するのがよいでしょう。)

     

  • 受贈者が未成年の場合は親権者(両親)が直筆で署名・捺印すること。

2.基礎控除額を超える場合は贈与税の申告をすること

  • 申告書の署名欄は受贈者(納税者)本人が直筆で署名・捺印すること。
  • 贈与税は受贈者のお金から納税すること。

3.現金の贈与を受けた銀行口座は受贈者自らが管理していること

  • 通帳も印鑑も受贈者が管理していること。
  • 受贈者がいつでも自由に使える状態にあること。

4.現金をもらった人がその現金を自分で運用したり、使ったりしていること

贈与税申告について

贈与税の申告書は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与を受けた人の住所地を所轄する税務署に提出し、贈与税は3月15日までに納付する必要があります。

後々、贈与の事実を証明するために申告書や納付書の控えはすべて保管しておきましょう。

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